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分類:技術

東海道水の旅 新・東海道水の旅

東海道水の旅   新・東海道水の旅   
『東海道水の旅』  中西準子 著   岩波ジュニア新書/1991.3
『新・東海道水の旅』 浦瀬太郎 著  岩波ジュニア新書/2015.5
岩波書店

  東京駅から東海道新幹線に乗って、大阪までの車中から、水をめぐる施設や川を見ていきます。最初に出版された「東海道水の旅」を書いた中西さんは、当時下水道の専門家でした。出発してすぐの芝浦下水処理場を早速紹介します。大切な水問題、下水道に注目して欲しいからです。では20年後、今度は違う著者で、のぞみ号に乗る、「新・東海道水の旅」ではどうなっているのでしょう?処理場は水再生センターと名前を変えました。下水処理の方法などは、こちらの本がやや詳しいようです。こちらでは鉄道や道路の整備から話が始まっているのも、前の本と違います。同じ場所を話題にしても、2冊見比べるとかなり違う印象です。前の本では最近の問題として、産業廃棄物や製紙工場の排水が挙げられていましたが、このような産業公害は、過去のものとなっていると新しい本には書かれています。富士市の製紙工場もかなり衰退してしまい、浮き沈みのある産業になったと書かれます。
 天竜川の水源、諏訪湖についても2冊を比べると興味深く読めます。前の本でも諏訪湖の汚れ、上流のダムが土砂でかなり埋まっていることに触れています。最近、諏訪湖の水質は、やや改良されてきました。近辺の下水処理場では、なぜか汚泥に金が含まれていて、高く売れるようになっていました。しかし2011年の福島原発事故後、ここでもセシウムが検出され、売れなくなった年があったそうです。こんなところまでと事故の影響の強さに、恐ろしさを感じます。一方で砂に埋まったダムは、そのまま良い方法もなく、洪水の時の危険が心配されています。名古屋付近では 、木曽三川で名高い、長良川が話題になります。この川はダムのないことで知られていましたが、河口堰の計画で裁判になるなど、有名な環境問題になりました。揖斐川上流の徳山ダムも50年もかけて完成しました。ここも反対運動が起きたところです。若い人たちに日本列島のことを頼みたい、ダムのために全戸が沈む徳山村を思い、気を重くしていると書いたのは中西さん、浦瀬さんは、反対運動が広がる事業は、ほんとうに必要だと断言できないものが多いといいます。また公共工事の難しさ、解決法について思うことを語っています。京都から大阪まで、この間の水問題も多彩です。観光地として名所を見る以外の修学旅行のテーマがあってもよさそうです。社会科、理科、地理、政治経済まで実に幅広い問題提起があり、最新情報の多い「新・東海道水の旅」です。中西さんが書いた「東海道水の旅」」とは違う本という印象がありました。中西さんは後書きで、たくさん水にまつわる体験をして、そのことを考え続けて欲しいと言っています。メッセージ性の違いでしょうか。

科学読物研究会     鈴木有子