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分類:生き方・伝記

クジラと海とぼく

クジラと海とぼく</a><br>
水口博也<br>
<a href=アリス館/a> ; ISBN: 978-4-7520-0523-0; (2010年9月)

私たちの国は海にかこまれているが、そこに棲んでいるクジラはあまり大きいので研究するのはむずかしい。著者は、海外の研究者と共同で、または独自で、広い海を舞台にクジラの生態を研究したり、写真をとったりして、たくさんの本を出版している。子どもの本では、『クジラの超能力』(講談社)『クジラ大海原をゆく』(岩波書店)『マッコウの歌』(小学館)などがある。この本は、著者がクジラに魅せられて、海の科学ジャーナリストになるまでをエピソードで語っている。著者がであった素敵な経験が、おもしろい読みものになっており、また、子どもたちが未来を考えるときにも、職業をえらぶときにも、新しい可能性をしめす指針になるだろう。

 著者は、どんな子どもだったのだろうか。生まれたのは大阪。夏になると、いつも母の実家の徳島の日和佐ですごした。はじめは漁師が取ってくる魚や、漁網についている小さなエビやカニをひろったりして、かれらが海の中で生きている姿を想像するのが好きだった。ここの大浜海岸は毎年アカウミガメが産卵にくるところ。ウミガメに夢中になった。テレビで、フランスのクストーによる世界の海の生き物の番組をみると、すっかり魅せられた。中でもクジラの映像に釘付けになり、世界の海にあこがれをもつようになった。父のカメラで水中撮影に成功したり、さまざまな小さな実験や工夫をするのも好きだった。大学では海洋生物学をえらび、基礎的な研究の方法を学んだ。沖縄で、世界で一番大きな生きもの、クジラに実際にであった時は、どんなに衝撃だったことか。海洋博で海外の雑誌編集者や科学ジャーナリストに会って、こんな仕事もあることを知ってからは、海のジャーナリストになりたいと思ったという。

 出版社の仕事で実際に海に出るようになると、また新しい世界が開けていった。クジラの生態調査に参加し、ハワイ、メキシコ、カナダ、アメリカの海でクジラに会いに行く。クジラと泳ぎ、一緒に遊ぶ経験をする。クジラとの出会いは、至福のよろこびだった。クジラ、イルカ、さまざまな海の生きものを写真にとり、生態をしらべ、それを伝える喜びが、本から伝わってくる。

 子どもの時の体験が、将来に大きい影響を与えることがわかる。挿し絵は、クジラを題材にした雰囲気のある絵である。中学生から大人まで。

科学読物研究会     赤藤由美子